testヘジテイト・フォー・フィア

 メガロニアドームに響き渡る歓声が耳に刺さって、わんわんと頭に響く。  昨日は飲んでいないから、酒は抜けたはずだ。この頭痛は、一睡も出来なかったせいか。 (頭いてぇ……)  そう思いながら階段を下りていき、自分の席に座る…
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testサムワン・フォー・プレイヤー

 ――深く沈んでいた意識がゆっくりと浮上し、まぶたの裏に光を感じる。  頬を撫でる優しい風に誘われるように目を開くと、頭上の窓は開け放たれ、白いカーテンがふわりと踊るように揺れていた。  差し込む陽光に瞬いていると、鳥の…
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testファースト・コンタクト

 その名を知ったのは、メガロニア開催まで二か月を切った頃だった。 「おばちゃん、はよっす。新聞一部、頼むわ」  よく立ち寄るニューススタンドの前にバイクを停めたキャットが声をかけると、顔見知りの店主がはいはい、とにこやか…
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testコール・トゥ・エンドA/B

 その日、藤巻は場末のバーで人を待っていた。  今にも崩れ落ちそうな薄汚い店は、彼の好みではないが、たまにふらりと訪れる。昔まだここが流行っていた頃、よく足を運んだからだ。  まだ何者でもない若造だった自分には、ここの安…
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testコール・トゥ・エンド

 その日、勇利がシャルの無断欠勤を知ったのは、昼近くになってからだった。 「勇利、キャットがどこにいるか知らないか? 連絡なしに休んでるんだが」 「……いや」  ジムのトレーナーに聞かれて首を振った勇利は、一人になってか…
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testコール・ユー

 斜めに崩れた看板の酒場は、廃墟のようでいて、一応はまだ営業の灯りをともしている。  古い木戸を押せば、油の切れた蝶番が大きなきしみを立てて、無遠慮に来訪者の存在を知らしめた。  それを押しのけて一歩足を踏み入れると、ア…
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test暗中に咲く

 半分残っていた光は失われ、すべては闇に閉ざされた。  半分の闇にはずいぶん慣れていたから、すべての闇にもすぐ慣れるだろうと高をくくっていたが、大違いだ。  何しろなにも見えないものだから、どこへ行くにも手探りのすり足で…
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testゴー・バック・トゥ

 廊下の遠く、スタジアムではまだ、熱狂さめやらぬ観客のざわめきが響いている。  かすかに届くそれを聞きながら、キャットは控え室の扉をごんごん、と叩いた。  少し間があって、ぱたぱたと小さな足音がしたかと思うと、きしんで開…
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testスウィート・トーチャー

 資料室で手にした本は、これまで持った中でも特別に厚く重く、支えるのも困難だ。  仕方なく本棚に背を乗せてページをめくるが、ぎっちり詰め込まれた文字の大群に襲われ、複雑怪奇な図解に頭がくらくらしてくる。 「うっ……く………
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test蛇は冠をかぶり、蠍は毒に溺れる

 ドランク・モンクの闘技場は薄汚れ、酒と煙草と欲の悪臭がこびりついて離れない。毎夜繰り広げられる負け犬どもの狂騒は日が昇るとともにお開きとなり、後に残るのは、びりびりに破れたチケットと、酔っぱらいどもの吐しゃ物くらいなも…
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