testディア・マイ

 夢うつつに、自分が目を覚まし始めている事を自覚する。  眠りが気持ちいい。布団も柔らかくて温かい。まだ起きたくない、と眠気にしがみつきながら、うーん……と寝返りを打った時、 「!?」  伸ばした手に何かが当たり、キャッ…
続きを読む →

testシークレット・トーク

 朝の基礎トレーニングを終えて、スパーリングの為にロープをくぐったところで、 「……はよーっす」  ジムの入り口から聞こえてきた声に、勇利はぴくっと反応した。グローブをはめながら、さりげなく視線を向ければ、 「よぉキャッ…
続きを読む →

testウェル・ソートアウト

 考えすぎか。こんなものを用意していると知られたら、やはりそれが目当てか、と軽蔑されるのでは。いやしかし、何もないのもどうか――  さっきから同じ言葉ばかりが頭の中を回り、一歩も動けない。勇利は小さくため息をつき、かぶり…
続きを読む →

testグラスプ・フォーチュン

 どっ、と勢いよくベンチに倒れ込んだのは、脇腹の激痛に耐えきれなかったせいだ。 (……いってぇ……く、そっ……)  切れる息の下で毒づき、手で押さえると、呼吸が止まるほどの鋭い痛みが走る。服の上から殴られたので状態は見え…
続きを読む →

testリンガリング・セント

 一日を終え、街の賑わいから遠ざかり、静寂に包まれた我が家に帰る。  聞こえるものといえば周囲の森を駆け抜ける風の音、それに乗って届く波音。  穏やかな暮らしは、日々闘い続けている中で一時の休息だ。  どれだけ気を張り詰…
続きを読む →

testユー・ガット・メール

「ぁいたっ」  かがんで段ボールを持ち上げたら、腰に軽く痛みが走ったので、つい声が出た。やばいか? と様子見で動きを止めたが、痛みは余韻を残しつつも緩やかに消えていく。 (うーん……まだ、本調子じゃないか)  だいぶ復調…
続きを読む →

testYouth-and-old-age

 季節は春。  街中であれば桜が花開き、あたたかな春風の中、人々は重たい冬服を脱いで楽しく笑いさざめいているだろう。  だがここは――海辺は、まだ少し肌寒い。  打ち寄せては引く波、海上を吹き抜ける風は、暦の季節より少し…
続きを読む →

test甜蜜时光

 ジミーがいい紹興酒を手に入れたのだと、珍しく酒食に誘ってきたものだから、油断していた。 「ん~~……」  卓を囲んで思い思いに箸と杯を進める穏やかな時間を過ごしていたら、隣で気の抜けた声がした。視線を向けるより先に、と…
続きを読む →