美しいものは彼にとって何の益もない、無駄なものだった。 　自身の容貌はもともとそれほど美しいものではなかったし、その顔に押された火の烙印は彼に恐怖の仮面をはめ込み、決して剥がれ落ちる事はなかった。彼を見るものは皆恐れお… 続きを読む →

「初めまして、ローゼリアお嬢ちゃま。アタシの名前はフレイ、今日からアナタの身の回りのお世話をする事になったからよろしくね★」 「……何よあなた気持ち悪い、今すぐ出ていきなさいよ！」 　顔を合わせるなり、叫んだ私があいつに… 続きを読む →

　静かな夜だった。 　耳に届くのは涼やかな水音。 　水面に映った月が風に揺れて、輪郭を歪ませている。 　S.H.I.E.L.Dという巨大な組織が崩壊し、ヒドラが猛威をふるって世界中が混乱に陥っているというのに、この夜はま… 続きを読む →

　一年目。俺にとって鬼龍院皐月は、決して越えられない、巨大な壁だった。 「……くそっ、また負けた！」 　汗で蒸れた面を脱ぎ捨てながら、猿投山は剣道場の床にどしんと腰を落とした。 　高校一年生になってもまだ中学生のように幼… 続きを読む →