test花のうへの露23

 ふ、と目を開くと視界が明るかった。今は夜ではなかったかと混乱したが、すぐにそれが夢だったのだと気づく。 (……あぁ……)  鼻がつんと痛い。頬に触れた指先が水滴に濡れたので、朝顔は吐息を漏らした。 (昔の夢を見て泣くな…
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test花のうへの露22

(鉄砲の音!?)  佐助はぎくりとして振り返った。頼鷹を残してきた方から、さらに銃声がいくつも重なる。 (頼鷹様!)  体を氷に貫かれたような寒気が走り、佐助は取って返そうとした。しかし、 「お待ち、佐助」  背中から刺…
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test花のうへの露21

 桔梗のもとへ頭の文が届いてから、二週間後。鷹通により陣触れがなされ、物々しい空気が城内を包み込んだ。 「今回の初手は、奇襲作戦だ。鳴竹が打って出るより先に、まずこちらが先手を打つ」  甲冑の着込みを手伝う佐助に頼鷹が語…
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test花のうへの露20

 小姓の仕事を終え、頼鷹の前から辞した後、人も寝静まった夜分。  こっそり部屋を抜け出した佐助は、お気に入りの松の枝に陣取った。そして、頼鷹から下賜された脇差しを両手に握り、ゆっくりと鯉ロを切る。  きぃ……ん……。  …
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test花のうへの露19

 夜中駆け回っていた桔梗は朝方屋敷へ戻り、半刻寝た後、起きた。すぐに身支度を整えて、部屋を出る。 「鷹通たかみち様、お目覚めの刻限にございます」  そうして、途中あちこちに寄りながら、まだ人もまばらな廊下を通って行き着い…
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test花のうへの露18

 何も見えない、真っ暗。自分の体が消え失せて、心だけ浮いているような感覚だ。時に見える世界はぐるぐる回っていて、何一つ捕らえられない。気持ちが悪い。吐きそうだ。頭蓋をヤスリでこすられているようで、激しい痛みに何もかも投げ…
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test花のうへの露17

 奥州の空を覆った黒雲は始め雨を、やがて細雪を降らせた後、風に運ばれて消えた。地面に薄く積もった雪も溶け去り、今宵はさえ渡った月が空を飾っている。  その夜、政宗はその明かりを浴びながら、月見酒を楽しんでいた。開けた障子…
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test花のうへの露16

「……石田三成。聞き覚えのある名だな」  朝顔の殺気に顔をしかめながら、小十郎は記憶の糸を辿った。そう遠くない日、その名を耳にした気がする。朝顔はそうだろうね、とため息混じりにいった。 「先の武田上杉による豊臣侵攻の折り…
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test花のうへの露15

 熱い。身体が燃えるように熱い。 「う……くっ……」  息が苦しい。は、と息を漏らして目を開く。ぼやける視界は薄闇で、何も見えない。 (ここ、は……)  どこだろう。考えようとしたが、頭がぼうっとして働かない。からからに…
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test花のうへの露14

 ギァン!  高い音を立てて刃と刃がかみ合った。そのまま互いに一寸もひかぬつばぜり合いとなり、ぐずついた地面に足がめり込む。刀ごしに痩身の男とにらみ合いながら、政宗はニッと口の端をあげた。 「どこに行くつもりだ、あんた。…
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