test花のうへの露43

 あの日の光景はこの目に焼き付いて、片時も消えることはない。  降りしきる冷たい雨。  数え切れぬほど負った傷から流れ落ちる血で、足下の水たまりが赤く染まっていく。  その同じ血だまりに倒れ伏す、切り捨てた兵達の山。  …
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test花のうへの露42

 大地が揺れる。猛りきった兵つわものどもが天を割くようなときの声を上げ、押し寄せる波のごとく大地を駆けてぶつかり合う。  鋼がはじけ、怒号と悲鳴が響きわたり、地は倒れ伏した男達の血を吸って赤く染まっていく。戦いの火蓋が切…
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test花のうへの露41

 開戦を間近に控え、兵達のざわめきが聞こえる。熱気に満ちた空気に自らも高揚感を覚えながら小十郎は陣の中で一人、気を整えていた。  伊達軍は二手に分かれ、先鋒を小十郎がつとめる事になっている。石田三成との決着を望む主の為、…
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test花のうへの露40

 幾千、幾万の兵達。  それぞれの思惑はあれど、ここに寄り集まった人々は皆、明日の世を生きたいと臨み願った者達。初めは世迷い事と一笑に付され、捨て置かれた平和な世の夢を、今はこれほどに多くの者が胸に抱いている。  関ヶ原…
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test花のうへの露39

 それは、二度と聞きたくない名だった。 「やぁ、片倉殿! 独眼竜は……」  徳川の言葉の後は聞こえなかった。胸が痛むほどに弾み、ざぁと血の気が引く。視界に映るその男は、決して会いたくはない相手だった。 「……っ!!」  …
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test花のうへの露38

『あたしだって、旦那みたいな役立たずは御免だよ。少しは楽しめるかと思ったけど、期待はずれもいいとこだ』  そう言って、あの女は嘲りの笑みを浮かべた。それなのに思い返すとなぜか、あれが悲しみに満ちた表情だったように思えてな…
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test花のうへの露37

 織田信長、豊臣秀吉という巨星が落ちた後、戦国の世は転機を迎えた。  二強の蹂躙により疲弊した国々は、厭戦の空気に包まれつつあった。戦に苦しみ、疲れ果てた人々は、徳川家康が語る力強い言葉に、太平の世を夢見、心を寄せつつあ…
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test花のうへの露36

 奥州を出て後。痛む体を押して朝顔は単身、大阪に入った。  その狙いは石田三成。だが豊臣亡き後、その遺志を継いで起った石田軍はいまや、一大勢力となっている。もはや、易々と大将の命を奪えるものではない。  朝顔は怪我の治療…
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test花のうへの露35

 縁があったらまたどこかで会おう。  そんな言葉を交わして慶次と別れ、山寺を後にした桔梗は、先を急いだ。十分遠ざかったと見てからは薬売りの装束を脱ぎ捨て、しのび姿で進む。 (遅れた分を取り戻さなけりゃ)  懐には、半兵衛…
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test花のうへの露34

 それは、山間の小さな寺だった。  斜面に伸びる、細く急な石段を登りきると、門が目の前に現れる。その敷居をまたいで入った境内は、小さな寺社を取り囲むように、紅葉の青い枝葉が覆い被さっていた。  はらりはらりと気まぐれに落…
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