test従者、彼の日を思う4

 白い敷布の上を、汗ばみ紅潮した肌を伝って、鮮やかな赤の髪が花弁を散らされたかのように波打ち広がる。  果てしないと思えるほど惑乱の時を過ごした後では、今が夢なのか現なのか分からない。神々の宴もかくやと思うほどの幸福感が…
続きを読む →

test従者、彼の日を思う3

 苛烈な戦で勝利をもぎとったその日、イスカンダル王はすこぶる機嫌がよかった。挑んだ敵は完膚無きまでに叩きのめした。血湧き肉踊る戦いは、終わった後もまだこの胸を高ぶらせてやまない。  今、王の軍勢は野営を行い、日が暮れた戦…
続きを読む →

test従者、彼の日を思う2

 夜も更けたというのに、眠りはまだ訪れない。体は疲れ切っているが、目は冴えていく一方だ。 「うーん……うーん……あぁ、もう!」  どれほど頑張っても、眠れそうにない。転々と寝返りを繰り返したあげく、シャムスはがばっと起き…
続きを読む →

test従者、彼の日を思う1

 ――この地の果てになにがあると思う。  あの人は木の幹のように太い足であぐらを組み、問いかけてくる。その足の間から、どこまでも続く満天の星空を見上げた少女は、首を傾げた。 「……わかんない」  天地は少女に比してどこま…
続きを読む →

test少女、怪物と巡り会いす

 その時何が起きたのか、幼い少女には理解出来なかった。ただ父の力強い手、母の優しい温もりが突然奪われ、この身が何もない道ばたに放り出された。そしてそれは、自分だけではなかった。  人々が日々の生活を営んでいた村は戦場と化…
続きを読む →

testマスター、歌に憩う

 大地を揺らして駆ける勇壮な戦人の群。王と共に馳せる栄光に歓喜し、目を輝かせ歓声を上げながら敵に立ち向かっていく姿は、誇らしげでどこまでも壮烈だ。  そのただ中、ウェイバーは砂塵が舞う地面に座り込んで呆然としていた。目に…
続きを読む →

test宴の終わりに

 雲一つ無い夜空を紫電が走り、轟音が鳴り響く。猛る牡牛二頭は何もない空を分厚い蹄で蹴り、主の願うままに冬木の上空を駆け抜けていった。 「…………」  手綱を握るライダーの後ろで、ウェイバーはへたり込んでいた。  彼はもち…
続きを読む →

test騎兵、悼みて激昂す

「AAALaLaLaLaLaie!!」  王の胴間声をかけ声として戦車が駆け抜け、抵抗の間さえ与えず、地に充満するおぞましい魔物どもを巨大な車輪で轢殺していく。挽きつぶされるごとに飛び散る肉と血は、あっという間に下水管の…
続きを読む →

test従者、憧憬を抱きて沈みゆく

※マッケンジー夫妻のなれそめねつ造ありです。  その日のマッケンジー宅の夕餉は、いつになく賑やかな笑いに包まれていた。 「ほうほう、エジプトからインドまでご旅行されたのですか。それはまた、ずいぶん色んなものをごらんになっ…
続きを読む →

test王、従者を愛でて止まず

 ようやく脚絆を手に入れ、晴れて外出した先――それが目を楽しませる景色もない、鄙びた川辺というのは、著しくイスカンダルの機嫌を損ねていた。 「全く、坊主めはつまらぬ用事で余を煩わせよって」  何をするのか知らないが、マス…
続きを読む →