天職

 こいつの直し方を教えてくれ、と申し出てきたのはいつだったか。
 自身の生き方に納得できないのをぶつけるように、粗雑に扱っていたのが、ずいぶん成長したものだ。それを嬉しく感じたから、否やもない。
 だが、教えてみれば存外不器用で、細かい作業が向いてないなこいつは、と呆れるやら、笑ってしまうやら。
 いずれ音を上げやしないかとひやひやしたが、粘りに粘る性格だったから、やがてどうにか形には出来るようになってきた。
「自分だけでやってみたんだ。見てくれよ」
 そういって愛車を差し出してきたので、入念にチェックをする。拭きそびれたオイルがまだ残っているところがあったが、
「ああ、いいじゃねぇか。これなら及第点だ」
 答えると、ぱっと表情を明るくしたので、可愛いところもあるもんだと、こっちも顔を緩めてしまう。
「俺もやればできるだろ。あんたの弟子になってやろうか」
 浮かれついでにそんな軽口まで叩くから、いなすように手を振る。
「あいにく、俺ぁ弟子は取らない主義でね」
「そいつは残念だ。転職先が見つかったかと思ったんだけどな」
 浮かれすぎだと笑う陰で、続きの言葉は飲みこんだ。
 ――それに、お前さんにメガロボクス以外の事が出来るたぁ、思わねぇな。