肉まん、食うか?

 昼を食い損ねてそろそろ何か口に入れるか、というタイミングで、勇利が番外地ジムに顔を出した。
「珍しいな、あんたから来るなんて」
「この間野菜をもらったので、その礼にな」
 そういって、子どもが好みそうな菓子の箱を差し出してくる。律儀なことで、と笑って、そういえば客に茶を出すくらいのもてなしをしろ、とサチオに言われていたのを思い出した。
「今おっさんもサチオもいねぇから、その辺適当にいてくれ。茶……はどこだ」
「いや、構わなくていい。すぐ帰る」
 遠慮するなよと棚をあけたら、肉まんが二つ、ラップがけしてあった。自分のために残しておいてくれたのだろうと取り出し、
「茶が見つからねぇから、こいつでも食うか?」
 冗談めかして見せると、勇利は軽く目を瞠った後、
「――ああ、いいな。久しく食べてない」
 存外乗り気で答えたので、こっちが面食らってしまった。
「あんた、こんなの食うのか」
「昔はよく、な。そんなに意外か」
 よほど驚いた表情をしていたのか、勇利が苦笑した。そうだな、と頭をかいて、肉まんを温めるために皿を引っ張り出す。まだまだ、こいつについては知らない事ばかりだ。