情報収集

「松本、こっちだ」
「あ、居た居た。お疲れ、一角。いいの? ほんとに奢ってもらっちゃって」
「おう。今日は好きなだけ飲め」
「やーった、気前いいじゃないっ♪」
「その代わり、だ。話聞かせろ」
「ん? 何の?」
「…………雪音の話だ」
「……あぁ、なるほど」
「何だよ」
「だって、いきなり酒奢るーなんて言いだすから、どんな裏があるのかと思ってたの。情報収集のためか」
「悪いかよ」
「いや、いいんじゃない? 付き合い始めは色々手探りでしょうし。で、何知りたいの」
「……あー……、その、あいつ、前はどんな奴と付き合ってたんだ?」
「うわ。いきなり元カレの話なの」
「う、うるせぇな、良いだろ。何だ、そいつとどこいったとか、何したとか、そんな話をだな」
「する事はしてたと思うけど。子供じゃないんだし」
「ばっ……、そ、そんなこと聞いてねぇだろが!」
「やーね、冗談でしょ冗談、そんなに動揺しなくてもいいのに」
「……命惜しかったら大概にしとけよ、てめぇ……」
「まぁまぁ。そうねー、前の彼氏ね。優しそうな感じだったと思うわよ。雪音のいう事何でも聞いて、リードしてあげてっていう。年上だったから、雪音の毒舌も流してあげられたのかな」
「……ほー」
「二人の時何してたかってのは、あんまり知らないわね。その辺は虎徹のほうが、話聞いてるんじゃない?
 買い物とか、ご飯食べにいったりとかじゃないの。あ、ちょっと遠出して、瀞霊廷の外に遊びにいったりしてた気がする」
「外に……なるほど」
「でもま、最後は自然消滅しちゃったみたいだけど」
「(そういや前、そんな話聞いたな)……何でだ?」
「雪音はねー、彼氏に時間割くより、仕事に打ち込んじゃうからねー。お互い忙しくてすれ違いばっかりになって、あとは消滅……って感じだったみたい。
 というか、話聞いてたら、いつもそんな終わり方になってるみたいよ。『仕事と俺、どっちが大事なんだよ』っていう」
「……男が言う台詞じゃねぇな、それ」
「まぁねぇ。でも、デートすっぽかして仕事してました、なんてことが続いたら、あんただって嫌でしょ?」
「そりゃ、まぁな」
「あの子元々、恋愛には淡白なのよね。自分から積極的に動くより、相手からのアプローチ受けて、とりあえず付き合ってって感じで。自分で告白するより、される方みたいだし」
「けっ、物好きな奴もいたもんだな」
「あんただってその内の一人じゃない」
「うっ……」
「ところで、ねね、あんたはどーやってあの子落としたの? やっぱ、一角から告白したの?」
「う、うるせぇな、そんなの関係ねぇだろ」
「何よー、人が親切に雪音の情報教えてあげてるのに、関係ないはないでしょ! ねーねー、教えなさいって、どうなのよ実際」
「だーっ、やかましい、絡みつくな! てめぇは酒でも飲んでろ!」