testエピローグ

 ――じゅ――きょーじゅ、ちょっと起きてくださいってば、教授!」 「!」  揺さぶられて覚醒し、かっと目を見開く。見開いた視界いっぱいに人の顔が映り、瞬間エルメロイ二世は総毛だった。 「うわっ!」 「ぐはっ!?」  悲鳴…
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test彼方にこそ栄えあり

 ウェイバー・ベルベットは勝利を信じていた。  離れていても颶風ぐふうとなって吹き付けてくる殺気。遠くに眺めた時ですら怖気を震った、切り刻むような空気に対峙し、己の死を間近に感じながらも、彼は信じていた。  ウェイバーの…
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test思いは、遠く、近く3

 生前、彼は多くのモノを欲した。その欲望は尽きる事を知らず、彼は心赴くまま、力をもって蹂躙し、全て略奪した。  彼は土地を侵し、奪い去り、その両腕に抱え切れぬほど多くのモノを得た。彼はその一つ一つを心から愛し、大事にした…
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test思いは、遠く、近く2

 結った髪をほどき、真っ白なワンピースをまとったアイツが、駆けていく。  裸足の足下では波が砕け、どこまでもどこまでも、砂浜と海が広がっていた。  鳴り止まない潮騒。砂を踏む音。それ以外何一つ聞こえないその場所で、アイツ…
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test思いは、遠く、近く1

 王にこの命を捧げ、魂を賭けて何よりも尽くしよう。従者となったあの日に抱いた誓いは、この胸に刻み込んで、一時たりとも忘れた事はない。  唯一人の、尊く愛しい主の為なら、どんな犠牲も厭いはすまい。  王のおわすところに我が…
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test従者、願いて絶望す

「……なんで、こうなる?」  ベンチに座ったウェイバーは、ジャンパーの中に口を埋め、げんなり呟いた。  確かに自分は街に出ようと言った。現代の世界に興味津々のライダーを連れ出せば、そりゃ面倒な事になるだろうとは覚悟もして…
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test従者、彼の日を思う4

 白い敷布の上を、汗ばみ紅潮した肌を伝って、鮮やかな赤の髪が花弁を散らされたかのように波打ち広がる。  果てしないと思えるほど惑乱の時を過ごした後では、今が夢なのか現なのか分からない。神々の宴もかくやと思うほどの幸福感が…
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test従者、彼の日を思う3

 苛烈な戦で勝利をもぎとったその日、イスカンダル王はすこぶる機嫌がよかった。挑んだ敵は完膚無きまでに叩きのめした。血湧き肉踊る戦いは、終わった後もまだこの胸を高ぶらせてやまない。  今、王の軍勢は野営を行い、日が暮れた戦…
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test従者、彼の日を思う2

 夜も更けたというのに、眠りはまだ訪れない。体は疲れ切っているが、目は冴えていく一方だ。 「うーん……うーん……あぁ、もう!」  どれほど頑張っても、眠れそうにない。転々と寝返りを繰り返したあげく、シャムスはがばっと起き…
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test従者、彼の日を思う1

 ――この地の果てになにがあると思う。  あの人は木の幹のように太い足であぐらを組み、問いかけてくる。その足の間から、どこまでも続く満天の星空を見上げた少女は、首を傾げた。 「……わかんない」  天地は少女に比してどこま…
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