testサレンダー・トゥ

「キャット、ちょっと勇利を呼んできてくれ。今なら仮眠室にいるはずだ」 「仮眠室?」  タオルの束を棚にしまっているところに声をかけられて、つい疑問形で返してしまった。  ジムには選手のため、仮眠室が設置されている。しかし…
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testリトル・ステップ

「はっ、はっ、はっ……は、もうダメだ……!」  足が限界に達して、がくんと崩れる。  たまりかねて芝生の上に転がり込み、汗が流れ落ちるに任せて、激しく呼吸を繰り返す。そこへ、  わん! わんわん! 「うわっ!!」  灰色…
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testデイ・アフター・デイ3

 早朝、扉を開けて、ジムの中へ入る。  ロードワークにも早い時間、誰もいないだろうと思ったのだが、見当が外れた。  しゅっ、しゅっとこすれる音を聞きとがめてそちらへ視線を向けると、女が一人、床にモップ掛けをしている。 (…
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testアンダー・チャーム

(話するって決めたはいいけど、さて……勇利をどこで捕まえられるかな)  未認可地区を訪ねた次の日。  会社の廊下を歩きながら、キャットは頭の後ろで手を組んだ。 (勇利はいつ見ても忙しそうだし、トレーニング中にする話でもな…
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testワイズマン・ウィズダム

 あーん、と大きく口を開いて、ハンバーガーにかぶりつけば、かさついたバンズと薄い肉、しなびたレタスにやたら濃いケチャップが口の中を満たす。  しばらくもぐもぐと咀嚼して飲みこみ、オレンジジュースをストローで吸うと、嘘くさ…
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testフィール・ロスト

 通いなれた道を歩き、ドアを開き、部屋の中へ入る。  広々とした空間はどこも綺麗に片付けられ、大きな窓から差し込む陽光で、きらきら輝いているように見える。  そこに整然と並ぶ設備――サンドバッグやパンチングマシン、ウェイ…
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testディスクローズ・ヒム

 ――それから、しばらく後のこと。  メガロニアの開催日が刻々と近づく中、勇利はトレーニングと広報活動とで、多忙を極めていた。  白都コンツェルンの大型プロジェクトとなれば、その影響範囲は多岐に渡る。  この機会に、ギア…
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testディスクローズ・ハー

 ――そして、その日は突然やってくる。  はぁ、と吐いた息が白く濁り、ゆっくり空中に溶け消える。  今日は季節外れの寒さだ。頭上はどんよりと灰色の雲に覆われ、陽光が一筋も差さない。  空の色を映し出す海もまた黒く沈み、身…
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testソフト・ナッシング

「つかれた。立ってらんない。帰りたい。帰っていいよな?」 「駄目だ。ここまで来て逃げるな」  いつになく弱音を吐きまくって訴えかけたが、相手はすげなく却下した。  借りた腕に寄り掛かって、うう、と肩を落とす。 「こーほー…
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testレイズ・ラッグ

「……最近、勇利に避けられてる気がするんだよな」  そんな事をふと呟いたのは、ギアのメンテナンスのため、研究所を訪れた時の事だった。  何度も通う内にすっかり顔なじみになった技術者は、背中に取り付けたギアをいじりながら、…
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