testコール・トゥ・エンドA/B

 その日、藤巻は場末のバーで人を待っていた。  今にも崩れ落ちそうな薄汚い店は、彼の好みではないが、たまにふらりと訪れる。昔まだここが流行っていた頃、よく足を運んだからだ。  まだ何者でもない若造だった自分には、ここの安…
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testコール・トゥ・エンド

 その日、勇利がシャルの無断欠勤を知ったのは、昼近くになってからだった。 「勇利、キャットがどこにいるか知らないか? 連絡なしに休んでるんだが」 「……いや」  ジムのトレーナーに聞かれて首を振った勇利は、一人になってか…
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testコール・ユー

 斜めに崩れた看板の酒場は、廃墟のようでいて、一応はまだ営業の灯りをともしている。  古い木戸を押せば、油の切れた蝶番が大きなきしみを立てて、無遠慮に来訪者の存在を知らしめた。  それを押しのけて一歩足を踏み入れると、ア…
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test暗中に咲く

 半分残っていた光は失われ、すべては闇に閉ざされた。  半分の闇にはずいぶん慣れていたから、すべての闇にもすぐ慣れるだろうと高をくくっていたが、大違いだ。  何しろなにも見えないものだから、どこへ行くにも手探りのすり足で…
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testゴー・バック・トゥ

 廊下の遠く、スタジアムではまだ、熱狂さめやらぬ観客のざわめきが響いている。  かすかに届くそれを聞きながら、キャットは控え室の扉をごんごん、と叩いた。  少し間があって、ぱたぱたと小さな足音がしたかと思うと、きしんで開…
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testスウィート・トーチャー

 資料室で手にした本は、これまで持った中でも特別に厚く重く、支えるのも困難だ。  仕方なく本棚に背を乗せてページをめくるが、ぎっちり詰め込まれた文字の大群に襲われ、複雑怪奇な図解に頭がくらくらしてくる。 「うっ……く………
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test蛇は冠をかぶり、蠍は毒に溺れる

 ドランク・モンクの闘技場は薄汚れ、酒と煙草と欲の悪臭がこびりついて離れない。毎夜繰り広げられる負け犬どもの狂騒は日が昇るとともにお開きとなり、後に残るのは、びりびりに破れたチケットと、酔っぱらいどもの吐しゃ物くらいなも…
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testラッピング

 ある日の白都ジムにて、選手たちの会話。 「よう、久しぶりだな。怪我の具合はどうだ」 「まぁまぁだな。次の試合には何とか間に合いそうだ。そっちはどうよ」 「俺ぁ万全よ。今度勝てば三十位以内に食い込めるから、気合い入れねぇ…
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testその声をさいごに

※ねつ造過多注意※ 藤巻さんに長年従ってた部下が裏切って、藤巻さんに殺される話。妄想に妄想を重ねてる感じなのでお気を付けください。 『――かれは知っていた。目の前の娘に口づけを与え、己の語りようのないほどのビジョンと娘の…
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testアラート・フォー・ディフェンスレス

「……あっ、こら、動くな! まだ全然乾いてないだろ!」  ぎゅむ、と首の皮を掴み、足を体に回してホールドすると、犬が不満そうに鼻を鳴らした。  今にも逃げ出しそうだが、その全身を覆う毛皮はまだべったり濡れていて、とても手…
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