testdie flower3

 ――空が青く晴れ渡ったその日。  暑くもなく寒くもなくちょうどいい天気だ。目を細めて見上げていたアラガキは、空から前方へと視線を転じた。  目の前にあるのは、綺麗にディスプレイされた色とりどりの花々。  花に疎いので名…
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testsweet tenderness

大きな福を君に  うららかな日差しの下、ゆき子は料亭の中庭に面した縁側に腰掛けた。  お出かけで、レースがいっぱいついた可愛い服を着るのは好きだ。今は靴下のはだしだけど、ここに来るとき履いてきた真っ赤な靴もお気に入り。皆…
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testthere is border.

 道端で死にかけている猫に出くわし、キリコは足を止めた。  無言で見下ろす。  一見して、車に後ろ半身を轢かれたらしい。血の跡が地面に長く伸びている。残った体力を費やして、死に場所を探しているようだ。  猫はふるふると頭…
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testdie flower 2

 ――老人の死が報じられてから後。  騒がしいマスコミが次のニュースを求めて去り、喧噪も落ち着いた頃、老人の世話役だったという男からファルへ連絡が入った。  呼び出された喫茶店にいたのは、眼鏡をかけた初老の男だ。  皺ひ…
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test風邪のお話

一日一個のリンゴ  思えば朝から調子がおかしかった。  いつもよりだいぶ遅い時間に目が覚めたし、起き上がったら、くらっとめまいもした。  だがそれもすぐ治まったので、寝起きだからかと一人合点し、寝坊を責められながらも朝飯…
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testas you wish

「――どうして皆、メガロボクスに夢中になるのか分からないわ」 「ん?」  その声にジョーは後ろを振り返った。壁際のソファの上では、ワイングラスを手にして、覚束ない目つきの女――白都ゆき子がいる。 「……何だって?」  床…
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testdie flower1

 さぁぁぁ……と柔らかい音でふと目が覚めた。何度かまばたきし、きゅっと眉根を寄せて、枕に顔を埋める。  眠気の残滓にすがるように瞳を閉じれば、周囲の音がいっそう鮮明に聞こえた。 (……あめ……?)  滑らかな布を優しく撫…
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testsky flower

「アラガキさん、これから買い出しにいくんですけど、欲しいものありますか?」  不意の問いかけに、アラガキはグローブを拭く手を止めた。  振り返ると後ろには車椅子の少年がいて、こちらを見上げている。よく気の付く少年はいつも…
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testmy first star

 幼いころ、星をねだった事がある。 『おにいさま。あのほし、ゆきこにちょうだい』  そういって指さしたのは、クリスマスツリーの頂で輝く星だった。私の指先を辿ってそれを見上げた兄は、あれかい? と困った顔になった。 『ゆき…
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