testわするばかりの恋にしあらねば9 2020-08-06 「あなたの姿が見えないと思ってたら、研究所に来てたんですね、九葉。博士にご用ですか」 こちらの動揺など知る由もなく、彼女は屈託なく問いかけてくる。間を置いた後、九葉はああ、と歩み寄った。 「……あれが治療をさせろ、とし…拍手! 続きを読む →
testわするばかりの恋にしあらねば8 2020-08-06 『――では、もうお体はよろしいのですね、軍師九葉』 頭の中に響くのは、心からの安堵がこもった柔らかな声。こちらの状況は折々に知らせていたのだが、日々緊迫していく情勢に気が気ではなかったのだろう。九葉は案ずるな、と声に出…拍手! 続きを読む →
testわするばかりの恋にしあらねば7 2020-08-06 命は、いつも自分の前を通り過ぎて行った。見送ったのがどれほどの数だったか、もう思い出せない。 命は過ぎ去る。それは当たり前で、何の感慨もわかない、当然の理。 ゆえに、時の彼方へ消えていく命の奔流の中で、自分はただ鬼…拍手! 続きを読む →
test番外:わするばかりの恋にしあらねば 2020-08-06 普段は何があっても落ち着いて対応する彼女が、その日に限っては、 ・火にかけたやかんをひっくり返す ・こぼしたお湯を慌てて拭こうとしてやけどする ・やけどした事を忘れてその手で武器を握って痛みに悶絶する というおっちょ…拍手! 続きを読む →
testわするばかりの恋にしあらねば6 2020-08-06 その女は、いつも一人だった。 傍から見ていれば、彼女には仲間がいた。寝食を共にし、命を懸けた任務へ挑み、背を預ける友がいた。 だが、彼女は一人だった。 どれほど皆に好かれ慕われ囲まれていようと、彼女はいつも此処で…拍手! 続きを読む →
testわするばかりの恋にしあらねば5 2020-08-06 さらさらと涼やかに、透き通った川の流れは続く。心を安らげるような清らかな音の中で、けれど先ほどからどうしてもそわそわしてしまう。 (……ど、どうしよう。やっぱり帰るべきかな。いや、こちらから呼び出しておいて、すっぽかす…拍手! 続きを読む →
testわするばかりの恋にしあらねば4 2020-08-06 「……おい、その辛気臭い顔をやめろ。飯がまずくなる」 「え? あ、ごめん」 神無に注意されたのは、戦の領域を浄化して後、久音の小料理屋で食事をしていた時のことだった。 任務に同行した焔、紅月、神無と、料理屋で会った椿…拍手! 続きを読む →
testわするばかりの恋にしあらねば3 2020-08-06 異界の空気は冷たく、重い。 正体不明の霧は、人が一歩異界に足を踏み入れた時からその体を蝕み始め、長く留まれば息をするだけで命を奪う猛毒の瘴気だ。 ゆえに、耐性のあるモノノフであっても常に行動限界を意識して慎重に行動…拍手! 続きを読む →
testわするばかりの恋にしあらねば2 2020-08-06 時は下り、オオマガドキより十年後―― マホロバの里はその日、つつがなく節分を迎えていた。 一時は人の世が壊れようかというほど追いつめられた過去を持つ人々は、季節折々の行事にことのほか重きを置いている。 今をもって…拍手! 続きを読む →
testわするばかりの恋にしあらねば1 2020-08-06 ――藍の色をしたその瞳はいつも、ここではない何処かを見つめているようにとらえどころがなく。 ――いずれ跡形もなく消え失せてしまうのではと、らしくもなく不安に駆られ。 ――そうして、私は過ちを犯したのだ。 夜も更け…拍手! 続きを読む →