test花のうへの露40

 幾千、幾万の兵達。  それぞれの思惑はあれど、ここに寄り集まった人々は皆、明日の世を生きたいと臨み願った者達。初めは世迷い事と一笑に付され、捨て置かれた平和な世の夢を、今はこれほどに多くの者が胸に抱いている。  関ヶ原…
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test花のうへの露39

 それは、二度と聞きたくない名だった。 「やぁ、片倉殿! 独眼竜は……」  徳川の言葉の後は聞こえなかった。胸が痛むほどに弾み、ざぁと血の気が引く。視界に映るその男は、決して会いたくはない相手だった。 「……っ!!」  …
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test花のうへの露38

『あたしだって、旦那みたいな役立たずは御免だよ。少しは楽しめるかと思ったけど、期待はずれもいいとこだ』  そう言って、あの女は嘲りの笑みを浮かべた。それなのに思い返すとなぜか、あれが悲しみに満ちた表情だったように思えてな…
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test花のうへの露37

 織田信長、豊臣秀吉という巨星が落ちた後、戦国の世は転機を迎えた。  二強の蹂躙により疲弊した国々は、厭戦の空気に包まれつつあった。戦に苦しみ、疲れ果てた人々は、徳川家康が語る力強い言葉に、太平の世を夢見、心を寄せつつあ…
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test花のうへの露36

 奥州を出て後。痛む体を押して朝顔は単身、大阪に入った。  その狙いは石田三成。だが豊臣亡き後、その遺志を継いで起った石田軍はいまや、一大勢力となっている。もはや、易々と大将の命を奪えるものではない。  朝顔は怪我の治療…
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test花のうへの露35

 縁があったらまたどこかで会おう。  そんな言葉を交わして慶次と別れ、山寺を後にした桔梗は、先を急いだ。十分遠ざかったと見てからは薬売りの装束を脱ぎ捨て、しのび姿で進む。 (遅れた分を取り戻さなけりゃ)  懐には、半兵衛…
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test花のうへの露34

 それは、山間の小さな寺だった。  斜面に伸びる、細く急な石段を登りきると、門が目の前に現れる。その敷居をまたいで入った境内は、小さな寺社を取り囲むように、紅葉の青い枝葉が覆い被さっていた。  はらりはらりと気まぐれに落…
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test花のうへの露33

「なるほど……今回の件については、よく分かったよ。報告ご苦労様、桔梗君」  豊臣軍が現在の拠点としている大阪城。その一室で文机の前に座した半兵衛は、いつもと変わりなく落ち着いていた。逆にその冷静さに居心地の悪さを覚え、女…
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test花のうへの露32

 その日より、五七の桐を掲げて豊臣軍が起った。  元農民と華奢な軍師、その配下の兵数十名で天下取りの戦に名乗りをあげた小さな軍は、しかし見る見るうちに急成長を遂げた。  豊臣軍は美濃の稲葉山城を拠点として次々と他国へ侵略…
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test花のうへの露31

 障子をすべらせて開いた先には、床で身を起こす巨漢と、美女にみまごうほど端正な顔立ちの美青年がいる。そして巨漢の方がこちらを見て、 「……貴様は……!」  瞠目して絶句した。その様子に、美青年――竹中半兵衛が柳眉を潜め、…
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