interview with

 ――ここまでお二方のお仕事について伺ってきたので、少しプライベートをお話いただけますでしょうか。お二人は以前、白都コーポレーションで社長の座を競ったと世間の噂ですが、実際の所どうだったのでしょうか。
「それを経済紙で聞くかい? 週刊誌がこぞって書きたがるネタだな(笑)」
「実際がどうであれ、世の中の方々は好きに想像されるでしょう? ここでお話してもあまり意味がないように思いますね」
 ――そうおっしゃらずに。お二人は見目麗しい御兄妹ですから、ファンも多くて、注目の的なんですよ。質問のメールもたくさん……こんなに頂いてます。
「僕がメガロボクサーだったのはずいぶん前だが、いまだに興味を持つ人がいるんだな。彼女は今もあちこちに引っ張りだこだから分かるが」
「あら。この間、展示会のテレビ放送で、五分近く話してらしたじゃない」
「あれは、ACEの新バージョンに関するプレゼンテーションだよ。白都と提携してるんだから知ってるだろう」
「もう少しわが社の宣伝をしてくださればよかったんですけど」
 ――仲がよろしいですね。樹生さんが立ちあげられた会社と白都コーポレーションの業務提携も好調だとか。
「勝手知ったる我が家、というのかな。白都の強みと弱みは把握ずみだから、足りない部分を補えばいい。逆にこちらは出来たばかりだから、白都のネームバリューと資金力を提供してもらえるのはありがたいですね」
「兄は優秀なエンジニアです。その技術力は折り紙付きですし、白都の枠組みの外にいるからこそ、内部で見ては気づきにくい点をフォローしてくれていますね。私は白都コーポレーションしか知らないので、こちらこそ助かっています」
 ――かつて後継者問題で社内が揺れていた、というのは、わだかまりもなく?
「話を戻してくるね(笑)
 ……そうだな、まぁ当時はもちろん思うところもあったが。今白都社長が言ったように、外に出る事で見えたものがたくさんある。
 大体僕は一介のエンジニアで、サポートは出来ても、人の上に立つタイプじゃないんだ。今の状態は適材適所だと考えてるよ。昔は出来る妹に嫉妬していたけどね(笑)」
「それは私こそ、器用で不可能のない兄に引け目を感じていましたよ(苦笑)近くにいたから、私たちはお互いの姿が見えていなかったんだと思います。距離を取って初めて、本当の自分になれたような気がします。
 ご存知の通り、私はギアの有用性を証明するため、第一回メガロニアトーナメントを開催しました。
 その折、長年のビジネスパートナーだったチャンピオン、勇利と道を違える事になり、一時はずいぶん落ち込んだんですよ」
 ――そうなんですか!? あの後も変わらずご活躍されていたので、全くそうは見えませんでした。
「そう振る舞っていましたから。白都の社長がパートナーを失って自信喪失している姿を晒したら、社員にも世間にも不安を与えるでしょう。努めて以前と変わらない姿を見せるようにしていましたが、家に帰って一人になると、私も……少しは、ね」
「そういう時、僕に電話をかけたり……あるいは僕から掛けたり、住処のロッジに招待して、アフタヌーンティーを楽しんだりね。少し気分転換に付き合っただけですよ」
 ――他の誰にも言えない弱音を、お兄さんには言えたと。
「そう言われると、少し気恥ずかしいですね(笑)でも、あれは本当に助けになりました。おかげで今は兄と手を携えて、同じ未来へ歩いていける。
 人生には色々な……驚きや失望、喪失、別れ、様々な試練がありますが、それを糧に新たな明日へ迎えるのだな、と今は思っています。こうして兄と並んで対談出来る事は、私の喜びです」
「嬉しい事を言ってくれるな。俺も同じ気持ちだが、だからといってあのプロジェクトの値引きには応じないからな、ゆき子?」
「あら。リップサービスは通じないのね、困ったわ。今度兄の好きなクッキーでもわいろで渡そうかしら(笑)」
 ――お二人の貴重なお話をお聞き出来て、ファンの皆さんもきっと喜んでいると思います。白都の御兄妹の今後の活躍からは、いっそう目が離せませんね。本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました!