ジミーがいい紹興酒を手に入れたのだと、珍しく酒食に誘ってきたものだから、油断していた。
「ん~~……」
卓を囲んで思い思いに箸と杯を進める穏やかな時間を過ごしていたら、隣で気の抜けた声がした。視線を向けるより先に、とすっと肩に軽い衝撃。見れば、頬を紅潮させたシャルが気持ちよさげに目を閉じて寄りかかっている。
「おや、シャーリーさんは酔ってしまいましたか。無理に勧めてしまいましたかね?」
とっておきを酌み交わし、こちらも赤ら顔になったジミーが眉を寄せる。いいえ、と少し笑った。
「普段はだいぶ強いので、この程度なら大丈夫です。ただ、気の置けない場だと、あっという間に酔いが回るようで」
「ははは、確かにずいぶん気持ちよさそうでしたね」
シャルを挟んで向こう側に座ったリュウが、笑いながら顔を覗き込む。からかうように頬をつつくので、
「んーっ……」
こどもがむずがるように、シャルがその手を払って目を開けた。
「シャル。もう寝るか?」
呼びかけると、彼女は緩慢な動作でこちらを見上げ、ゆらゆらとした眼差しを向けてきて――それから、ふわりと頬を緩めた。
「へへー……ゆうり、だいすきー」
「!」
そのままいきなりぎゅっと抱き着いてきたので、思わず硬直。その場にいるものが皆目を丸くして、沈黙を挟み、
「……あー、そろそろお開きにしましょうか。おれ、片付けますよ」
「そうですね、もうだいぶ遅くなりました」
二人がそそくさと立ち上がるものだから、いささか居心地が悪いというか、頬が熱くなるというか。
「俺も……」
手伝います、と言いかけるも、
「勇利さんは、シャーリーさんを早く寝床へ送ってあげてくださいね」
にこにことした、だが有無を言わせない表情のジミーにやんわりさえぎられてしまい、二の句を告げられなかった。
すみません、と肩をすぼめるこちらの事など気にもせず、酔っ払いの妻は心地よさげな寝息を立て始める。
……いつものことだが、酔うと素直が過ぎて、少し困るな。
甜蜜时光 甘い時間。場所は勇利の家です。