計画が失敗に終わったのは、領界が消えた事で分かっていた。
街中に突然現れた森も、きっと風息に関わるものなのだろうと察しもしていた。
けれど。駄目になってしまったのだと頭では理解していても。
洛竹は格子越しに外を眺め見る。
風景に変わりはない。
龍游の街はいつも通りだ。
喧噪は洛竹にとって居心地の良いものではないが、平和な証ではあるのだろう。
あの騒ぎを人間の記憶から消し去り、痕跡を極力なくす事に館はずいぶん尽力したに違いない。
だが。
どれほど努力したところで、無かった事に出来ないものは、ある。
「……风息」
彼方を臨む。
人工物が積み木のように並ぶ街中に突如、青々とした木々が天をつくように伸びているのが見える。
それが、风息のなれの果てと知ったのは、この牢へ入れられてからの事だった。
(どうして。なんでだよ。……もっと、他の方法はなかったのか)
格子を握る手に力がこもる。
揺さぶったところで外れるわけもなく、もはや逃げる意思もない。だがそれでも無性にたまらなくなって、洛竹は渾身の力で握りしめながら俯いた。
「风息」
何度呼んだところで、もう彼は声を持っておらず、自分の呼びかけを聞く耳もないだろう。
望んでいた未来は、仲間と共に生きていくことだけだったのに。
何度目かも分からない悲嘆に膝をつき、洛竹は歯を食いしばって孤独に耐えるしかなかった。